No.4 金密輸は現代の錬金術  (2017-7-25)

金地金密輸にまつわる犯罪がやたら多い。特に博多では昨秋より連続で起きている

A. 昨年7月 博多駅前で金塊160kg(約6.5億円)を、警官を装ったグループに詐取される

B. 今年、4月20日 金塊買付け用の資金とみられる(約3.8億円)を銀行からおろした直後に強奪される

C. 同じ4月20日 金塊買付け用の資金約7億円を国外に持ち出そうとした韓国人グループを福岡空港で逮捕

おおよその流れは以下のようになる

1. 自由貿易圏の香港(マカオ・シンガポールでも可能)で金塊を1億円(約22kg)を購入して韓国へ出国

2. 韓国内の空港のトランジットエリアを使い、日本便に乗る運び屋に金塊を渡す

3. 運び屋は、当然、申告せずに福岡空港から入国

4. 入国を終えた運び屋は金塊を密輸業者に渡して、手数料をもらう

5. 密輸業者は、貴金属地金商に金塊を売り渡すが、金塊の1億円だけでなく消費税800万も受け取る

すなわち、金塊約22kgを密輸することで、粗利で800万円の儲けとなる 

ところが話はこれで終わらない! 誰も損をしないように見えるが、実は国民の税金が消えているのだ!

6. 貴金属地金商は、買い取った金塊を全量香港に輸出する(これは、ちゃんとしたルール・ルートで)

7. すると、消費税が還付されて、貴金属地金商には800万が戻ってくる

即ち、再び1に戻り、金塊密輸と金塊への海外輸出が延々と繰り返されるわけである。

確かに、TVに映っていた金塊には、既に存在しないNippon Mining(日本鉱業)の刻印があった!

つまり、密輸業者が儲けた800万円は、何のことはない、国民の血と汗の結晶である税金から出ていたのだ!

以上は、今年の5月23日にNHK 「クローズアップ現代」で放送されていた内容になる

筆者も1-5の流れはわかってはいて、誰も損をしないと思っていたのだが、金塊が再び香港に戻っていたことは、

この放送を見て初めて気がついた次第!

 

 

No.3 日本刀由来の日本語  (2016-9-1)

「焼きを入れる」:鋼材を高温(約750℃ 以上)に加熱してオーステナイト組織にした後、水中で急冷してマルテンサイト変態をさせて硬化させることを焼入れと呼ぶが、そこから転じて態度の悪い人に活を入れる意で用いられるが、一般社会ではあまり使わない言葉である。

「焼きが回る」:上とも関連するが、加熱しすぎると水冷による急冷効果が減少し硬さが足りなくなったり、逆に脆くなったりする。加齢により腕が鈍ったとか能力が落ちた際に使う。

「トンチンカン(頓珍漢)」:素材を赤く熱して、ハンマーでたたいて鍛える(熱間鍛造という)が、トンテンカン、トンテンカンとリズムよく作業をしている最中に、打ちどころが悪いと異音が出てくるところから転じ、空気を読めない人をこう呼んだ。

「付け焼き刃」:日本刀は、純鉄(柔らかい)を芯材として、硬鋼でおおった複合組織となっているが、粗悪な刀は、焼入れした刃を貼り付けてあるだけという意味。受験勉強の一夜漬けの結果として、「付け焼き刃では、全く歯が立たなかった」

「反りが合わない」:前述の焼入れの際に刀身は反るが、それに合わせて鞘を作成する。刀身が鞘にうまく収まらないところから、「○○氏とは反りが合わない」となった。なお、刀、鍔(つば)、鞘、柄を作る職人はそれぞれ別になり分業化されている。

「元の鞘にもどる」:新しい鞘に変えてみたがなじむことが出来ず、結局以前の鞘に戻した。転じて、けんか別れした夫婦・友人と仲直りして以前の状態に戻る際に使う。

「切羽詰まる」:切羽(せっぱ)とは鍔と刀身を固定する銅合金製の薄板になるが、同時に鞘と刀身間のスペーサーの役もする。切羽の手入れが悪いと、鞘から刀身を抜くことが出来なくなることから、打つ手が無い状態をいう。侍が刀を抜く前に親指で鍔を少し押すが、切羽の部分を外しているわけである。

「抜き差しならない」:戦闘時に刀を鞘から抜くことが出来ず、緊迫した状態をいう。

「しのぎを削る」:刀の断面で肉厚部をしのぎ(鎬)と呼ぶが、相手方の刀身をしのぎで受けることから、激しい闘いの事を「しのぎを削る」と形容するようになった。

「鍔迫り合い(つばぜり合い)」:同様に接近戦で鍔が当たるような戦いから来ている。

「目貫通り(目抜き通り)」:刀の柄の部分の金工細工の飾りを目貫と呼ぶが、一番の見所であることから、繁華街にも使われるようになった。

「身から出た錆」:手入れが悪いがために、使わない間に刀身が錆びてしまい使い物にならないことから、自分(身内)の不手際・不始末により苦労し、自業自得の意。

「オシャカ」:日本刀とは関係しないが、大事なものが壊れると「オシャカになった」と嘆き、製造現場では「オシャカばっかり作って!」と上司に新人が叱られるが、この「オシャカ」の語源はお釈迦様である。死んで仏さまになるという仏教的意味合いとか、鋳物屋で光背付きの仏像を鋳込む筈が、光背まで湯が入り込まず、お釈迦様のようになったとか諸説あるようだ。

 

 切羽、しのぎ、目貫等の独特の言い回し・位置関係は、別途ネット検索してご確認ください

 

 

No.1 金に関する豆知識: 24K,18Kの意味は??   (2015-12-15)

金のなんとも言えない光沢・色合(黄金色とか山吹色とか呼ばれる)は、永遠の女性のあこがれである。錬金術もいかに金を作ろうかと試行錯誤した努力の賜物になり、現代化学の礎となった。  さて、よく聞く24Kの意味とは??

 

24金、24カラットになり100%純金になるが、柔らかすぎて、例えば指輪とかペン先にすると摩耗が激しく実用的でない。実際に使用するには22K(約92%)が限界。延べ棒(インゴット)がもちろん純金100%で24Kにとなる。

世界での年産は4000-4500トン、内3割は現物投資用、1割は各国の金庫に入り、ジュエリー用とかの実際の需要は残り6割に過ぎず、他の金属とは様相が全く異なる。

18Kは、18/24が金になり75%、残りは銀・銅が各12.5%。イエローゴールドと呼ばれる事もある。

一方、ピンクゴールドは金:銀:銅の比が75:5:20であり、ホワイトゴールドは75:16:4で残り5%はパラジウム(あるいはニッケル)が一般的。

 

ホワイトゴールドは、日本語にすると白色調ゴールドになり、白金(プラチナ)とは全く異なる。元素記号も Au(金)とPt(白金)となっている。

g単価は、金が約4500円に対し白金は約3700円であるが、なにかの拍子に逆転して白金が高い時期もあった。なお、白金は燃料電池に欠かせない材料で水素の高純度化のための触媒として使っている。他にも排ガス浄化にも利用されておりジュエリー用だけではない

 

ダイヤのカラットは重量単位で0.2gとなるが、こちらは、K ではなく C を使っている。

ご存知のように、炭も黒鉛もダイヤモンドも炭素から出来ている。炭は非結晶でかつポーラス、黒鉛は六方晶であるのに対して、ダイヤモンドはダイヤモンド構造という特殊な結晶構造であり、いわば、無理やり狭いところに炭素をたくさん押し込んで全く身動きが取れない状態。そのため、地球上で最も硬い。また、そのために火を付けても簡単には燃えないのではと想像している。誰か実験してくれないであろうか?

 

No.2 無水鍋 バーミキュラとは(2016/2/5)

名古屋の鋳物屋さんが鋳物にホーロー仕上げした鍋を数年前より売り出している

http://shop.vermicular.jp/jp/

結構いい値段もしているが、ちょぉ人気で半年待ちとか10ヶ月待ちとかになっているらしい

無水鍋ということで、例えばシチューを作り時、野菜を切って肉を切って入れてとろ火にかけるだけ 水不要!

それでじっくり煮込めば野菜から水分がたくさん出てきて出来上がり! らしい

蓋と蓋が乗っかる部分の平滑度を(多分、数μm程度までに)両方共に出来るだけフラットに切削研磨して水蒸気が一切出ない圧力鍋(こちらは、一定の圧力になると弁が開放される)になっているようだ。

そして、南部鉄瓶みたいな鋳物色は避けて、ホーローでポップな仕上がりとしている

 

今日の話はバーミキュラの語源について

鋳物は鉄に3.5%程の炭素(黒鉛)と2%程のシリコンが入っているが、片状黒鉛鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄がある。前者はマンホールとかピアノの架台に使われ、結構もろい。後者は結構強くて小型車のクランクシャフトとか重要部品にも使われている。この中間にバーミキュラ鋳鉄があり、黒鉛の形状はイモ虫状である。バーミキュラ鋳鉄は、CV鋳鉄とかマリアブル鋳鉄とも呼ばれる。CVはコンパクト・バーミキュラの略で、マリアブルは鍛造出来るという意味である。そう、バーミキュラ(vermicular)はイモ虫の意味でした! しかし、どえりゃー大胆なネーミングだわっ!