周期律表 あれこれ 

      ~メンデレーエフから新元素発見まで~     

 

フクシマ以来、耳慣れぬ元素(セシウム等)がテレビ、新聞で話題になり周期律表を眺めていたら、人名由来の元素(キュリウム、ノーベリウム等)が多いのに加え、地名由来の元素もいくつかあった。アメリシウム、フランシウム等がそうになる。あの銅(copper)もキプロスからになるが、ジパングの金と同様に枯渇してしまっている。残念なことに日本はおろかアジア由来の元素は人名・地名ともに見当たらない。

 

ところが、「幻の元素、ニッポニウム」なる記事を見つけることができたので紹介したい。

 

さて、元素の起源は元々古代ギリシャでは水、土、火、気と中国では五行(火、水、木、金、土)と分類されたのに始まる。その後、錬金術時代を経てメンデレーエフが現在の周期表の礎を発表したのが1869年のこと。昨今の周期表には110ほどの元素があるのに対し、メンデレーエフのそれには63の元素が記載されていたが、HeNe等の希ガスは一切なく、また、今でいうと、ScGaGeHfの箇所は未発見だが近い将来必ず発見されると予言していた。

 

 話は変わり、明治のことだが東北大学に小川正孝博士がおられ、ある鉱石を分析していたらどうも新元素らしいのを抽出できた。それは1908年のことで、原子量を計算すると100であったことから原子番号43(今のTc)の位置にニッポニウムと命名し発表した。しかし、他の化学者では追認できず、また小川博士も東北大総長に就任し実験もあまりできなくなり、ニッポニウムは学会では認知されず疑問視されたままでその内に取り消されてしまった。

 結論をいうと、Tc(テクネチウム)は名前からも推測できるように同位体が全て放射性同位体となり安定同位体は存在しなくて、人工的にしかできない元素で自然界には存在せずに発見(合成)されたのは1936年であった。では、小川博士が発見したのは幻だったのかというと、実は周期表ではTcより1段下にあるレニウム(Re1925年発見)だったと最近の研究で明らかになったようだ。原子量を計算する時に化合物の設定を誤り本来なら186とすべきところを100Tc99)としたために極めて残念な結末となった次第。当時は、TcとReの位置の元素はまだ確認されておらず、特にMoとRuの間にある未確認元素の発見にたくさんの科学者が熱中していた。小川博士もTcに相当する元素と半ば狙い撃ちにして計算を進めたのではなかろうか?いくら東北大とはいえ、当時の設備は現在とは雲泥の差であったために惜しいことをしたものだ。

 

 

 もっとも、原子番号113(今はウンウントリウム、Uut)の元素を和光市にある理化学研究所が2004年に合成に成功したので、その内にジャパニウムとか命名させるやもしれない。ウンウントリウムという名前は仮でスペイン語の113からきている。この放射性元素の寿命は0.1秒もないので、

実用性は全くないが、Zn(原子番号30)の原子核をBi(原子番号83)の原子核に無理矢理衝突させて合成したものである。30+83=113

 

以上は、2011年終盤に当時勤務していた会社の社内報に書いたものに少し手を加えたものである。

2016年6月11日の新聞報道によれば、この新元素は「ニホニウム」に内定したようである。